「事務所では問題なく使えるのに、隣の店舗ではネットが遅い」「仕切った接客室に入ると、タブレットがつながりにくい」。小さな会社や店舗では、こうした困りごとがよくあります。
ネット環境に多くの費用や管理の手間をかけられず、家庭用ルーターや小規模なインターネット回線を利用している事業所も少なくありません。
事務機器会社や通信業者に相談すれば、業務の安定性や将来の拡張を考えた提案を受けられます。ただ、利用人数や用途によっては、必要以上の設備になったり、設定や保守が社内の負担になったりする場合もあります。
一部の場所だけつながりにくいのであれば、まずは今ある機器の使い方を見直してみましょう。
回線の遅さと、電波の届きにくさを確認する
ルーターの近くでは快適に使えるのに、店舗や作業現場、接客室では遅くなる。この場合、回線そのものよりも、Wi-Fiの電波が届きにくいことが原因かもしれません。
まず、同じスマートフォンやパソコンを使って、ルーターの近くと困っている場所で比べてみてください。場所によって使い勝手が大きく変わるなら、電波の届き方を改善する余地があります。
Wi-Fiは「速さ」と「届きやすさ」で使い分ける
一般的なWi-Fiルーターで使われる「2.4GHz」と「5GHz」は、電波の周波数帯を表しています。それぞれに得意なことがあります。
| 電波帯 | 主な特徴 | 使い方の目安 |
|---|---|---|
| 2.4GHz | 比較的遠くまで届き、壁などの影響を受けにくい。ただし、電子レンジや周囲のWi-Fiと干渉しやすい。 | 離れた場所の端末や、壁を挟んで使う機器。 |
| 5GHz | 高速通信に向き、2.4GHzより干渉を受けにくい。ただし、距離や障害物の影響を受けやすい。 | ルーターに近いパソコンや、オンライン会議など。 |
例えば、事務所のパソコンは5GHz、離れた接客室のタブレットは2.4GHzを試す、といった使い分けです。数値が大きい方を選べば、どこでも快適になるわけではありません。
接続先のWi-Fi名に「2G」「5G」などが付いていれば、選び分けられる場合があります。自動で切り替える機種もあるため、接続先が一つしか表示されなくても異常ではありません。
プリンターも、速さだけでなく、対応する電波帯や設置場所に合わせて選びます。2.4GHzにしか対応していない機種もあるので、説明書を確認しましょう。
なお、通常は同じルーターの社内ネットワークにつながっていれば、パソコンが5GHz、プリンターが2.4GHzでも印刷できます。両方を同じ電波帯にそろえる必要はありません。ただし、ゲスト用Wi-Fiや機器間の通信を制限する設定では、印刷できないことがあります。
買い替える前に、ルーターの置き場所を見直す
床の隅や金属製の棚の中などにルーターを置いていませんか。
できる範囲で、周囲が開けた少し高い位置へ動かしてみましょう。金属製の什器や厚い壁、電子レンジなどから離すことも、改善につながる場合があります。
店舗や接客室の方向に電波が届きやすい位置へ少し動かすだけで、追加費用をかけずに使いやすくなることもあります。
届きにくい場所には、中継器という選択肢
置き場所や電波帯を見直しても改善しない場合は、Wi-Fi中継器が候補になります。今あるルーターの電波を受け取り、その先へ届ける機器です。大がかりな設備工事に比べ、小さな追加投資で試しやすい方法です。
設置で大切なのは、「つながらない場所」ではなく、「元のルーターの電波がまだ十分に届く場所」に置くことです。
例えば、事務所と接客室の間の廊下や、店舗へ向かう途中の場所が候補になります。中間付近を目安に、機器のランプや設置ガイドで受信状態を確認しながら調整しましょう。
ただし、中継器はインターネット回線そのものを速くする機器ではありません。壁の材質や設置条件によっては効果が限られ、中継によって通信速度が下がる場合もあります。導入後は、実際に使う場所で、いつもの仕事が支障なくできるかを確かめることが大切です。
必要な場所を、必要な範囲で改善する
まずはルーターの置き場所を見直す。次に2.4GHzと5GHzを使い分ける。それでも届きにくい場所には、中継器を検討する。この順番なら、費用と手間を抑えながら改善を進められます。
相談する際も、「接客室のタブレット1台を安定して使いたい」など、困っている場所と用途を具体的に伝えると、必要な規模の提案を受けやすくなります。
今ある環境を生かし、日々の仕事で困る部分から整えてみてはいかがでしょうか。