中小企業が知っておきたい税務上の考え方
企業がウェブサイトを新たに制作したり、オンラインショップや業務システムを導入したりする場合、その費用はどのように会計処理されるのでしょうか。
制作費をその年度の経費として処理できるのか、それとも資産として計上し、数年にわたって償却する必要があるのか。実は、金額だけではなく、ウェブサイトやシステムの目的、機能によっても判断が変わります。
最近では、BASEやShopifyなどのクラウドサービスを利用するケースも増え、税務上の判断が難しい場面も出てきています。
今回は、中小企業が知っておきたい基本的な考え方を整理してみます。

一定の中小企業なら40万円未満は当期費用に
2026年4月の税制改正により、中小企業者等の少額減価償却資産の特例が、従来の30万円未満から40万円未満に引き上げられました。
この制度は、一定の要件を満たす中小企業が、40万円未満のソフトウェアなどの減価償却資産を取得した場合、取得年度に全額を経費(税務上の損金)として処理できるというものです。
対象となるのは、原則として資本金1億円以下、常時使用する従業員400人以下などの要件を満たす青色申告法人です。適用にはその他の要件もあり、年間の取得価額の合計300万円が上限となります。
なお、基準は「40万円以下」ではなく「40万円未満」です。また、税抜金額で判定するか税込金額で判定するかは、企業の消費税の経理方式によって異なります。
40万円を超えてもシステムの性格で税務処理が異なる
では、40万円以上のウェブサイト制作費は、必ず資産として計上しなければならないのでしょうか。
そうとは限りません。
例えば、会社概要や事業案内、商品紹介などを掲載する一般的なコーポレートサイトやブランドサイトは、広告宣伝を主な目的としているため、制作費を広告宣伝費として当期に計上できる場合があります。
仮に制作費が100万円や200万円であっても、広告宣伝費として認められる内容なら、減価償却の必要はありません。
一方、独自の受注管理機能や在庫管理機能を備えたオンラインショップ、社内業務を処理するWEBシステムなどは、ソフトウェアという無形固定資産に該当する場合があります。
この場合、原則として資産計上し、通常は5年間で減価償却することになります。
つまり、同じ100万円の制作費であっても、広告宣伝費として当期に処理できる場合と、資産として複数年にわたって償却する場合があるわけです。
クラウドサービスを利用した場合はどうなる?
近年増えているのが、BASEやShopifyなどのプラットフォームを利用したオンラインショップです。
こうしたサービスでは、ECシステムそのものはプラットフォーム事業者が保有し、利用企業はその機能を借りる形になります。
制作会社が行うのは、ショップのデザインや商品ページの制作、決済・配送方法の設定、標準機能のカスタマイズなどです。
この場合、利用企業がソフトウェアそのものを取得するわけではないため、初期制作費のすべてがソフトウェア資産になるとは限りません。
例えば、デザインや商品紹介ページの制作は広告宣伝費、一般的な設定作業は役務提供に対する費用として、当期に処理できる可能性があります。
ただし、注意が必要なのは、長期間にわたって効果が続く大規模なカスタマイズです。
ソフトウェアの所有権が利用企業になくても、継続的な効果を得るための支出として、税務上は「繰延資産」と判断され、複数年にわたって償却が必要になる場合があります。
したがって、クラウドサービスを使っているから必ず当期費用にできる、というわけでもありません。
制作を依頼する前に、見積内容の確認と税理士への相談を
このように、ウェブサイトやWEBシステムの制作費は、同じ金額であっても、その内容によって税務上の扱いが異なります。
特に、デザイン制作とシステム開発が一体となったウェブサイトや、クラウドサービスを利用したオンラインショップでは、費用と資産の区分が難しくなることがあります。
また、現在のウェブシステムは技術的な仕組みが複雑になっており、税理士や税務調査の担当者によって、制作内容の捉え方や判断が分かれる可能性もあります。
そのため、ウェブサイトやシステムの制作を依頼する際には、見積書の内容を確認し、デザイン制作、コンテンツ制作、システム設定、独自プログラム開発など、どのような作業に費用がかかるのかを把握しておくことが大切です。
そして、ある程度まとまった制作費が発生する場合には、発注前に見積書や仕様書を顧問税理士に確認してもらい、税務上の処理について相談しておくことをおすすめします。
制作費を当期の経費として処理できるか、複数年で償却する必要があるかによって、その年度の利益や税負担にも影響します。
ウェブサイトやシステムの導入は、制作内容や費用対効果だけでなく、税務上の扱いも事前に確認しておきたいところです。